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水害で全壊した家は公費解体が使えます|自費解体の費用償還と契約前の3ステップ

大雨で家が水に浸かり、「もう住めないかもしれない」と感じている方に、まず知っておいていただきたいことがあります。災害で「全壊」と判定された家は、解体費用を市が負担する「公費解体」という制度の対象になることがあります。すでに自分で壊してしまった場合も、条件を満たせば費用が戻ってくる「自費解体の費用償還」という仕組みがあります。

ただしこの制度には、知らずに動いてしまうと使えなくなる順番があります。このページでは、環境省のマニュアルと各市の公式案内をもとに、何を、どの順番でやればいいのかを整理しました。

先に結論:最初にやることは3つだけです

  1. 片付ける前に、被害状況の写真を撮る(これが後で全部に効きます)
  2. 市役所で罹災証明書を申請する
  3. 解体業者と契約する前に、市の担当課に相談する

この3つの順番を守るだけで、使える制度がぐっと増えます。逆に「先に業者と契約して壊してしまった」という場合、費用が戻らないことがあります。

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今回の災害について(令和8年9月24日時点)

気象庁は、令和8年8月13日からの千葉県の豪雨を「令和8年8月千葉豪雨」と命名しました。この災害には同日付で災害救助法が適用されています。

千葉県の災害対策本部会議資料(令和8年9月3日・第8回)によると、県内の住家被害は全壊12棟、半壊2,183棟です。全壊の内訳として判明しているのは千葉市5棟、市原市4棟です。

また、令和8年台風第25号については、千葉県の発表で令和8年9月20日に24市町村へ災害救助法が適用されています。住家被害は9月22日時点で全壊19棟、半壊4棟、床上浸水341棟、床下浸水86棟と発表されています。

※被害棟数はいずれも速報値で、今後変わります。台風25号については解体に関する支援の受付がまだ始まっていない市町村が多く、内容は随時変わります。必ずお住まいの市町村の最新の案内をご確認ください。

公費解体とは何か

公費解体は、災害で壊れた家屋の解体・撤去を、所有者の申請にもとづいて市町村が行う仕組みです。

根拠は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第22条にもとづく災害等廃棄物処理事業費補助金で、国が事業費の2分の1を補助します。さらに環境省の災害関係業務事務処理マニュアルには、補助対象外となった経費の8割が特別交付税で措置され、実質的な市町村の負担は約1割程度になる旨が記載されています。つまり、災害で壊れた家の解体は、国と地方の財源で処理される前提が制度としてつくられています。

本来、家の解体は所有者の責任で行うものです。それでも公費で解体するのは、壊れた家をそのまま放置すると生活環境や安全に支障が出るためです。「申し訳ない」と感じる必要はまったくありません。使ってよい制度です。

使える方法は2つあります

方法 内容 向いている人
市による解体・撤去
(公費解体)
所有者が市に申請し、市が業者を手配して解体・撤去する。所有者が費用を立て替える必要がない。 まだ解体していない人。資金の余裕がない人。
自費解体の費用償還 所有者が自分で業者と契約して解体し、あとから市に費用を請求する。 急いで壊す必要がある人。市の受付開始を待てない人。

どちらを選んでも、受け取れる金額の上限は同じ考え方で決まります。「市が公費解体したと仮定して計算した額」が上限です。環境省の「自費解体・撤去の手引き(第2版・令和8年7月)」には、公費解体と同様に算定した金額の範囲内であれば、自費解体に要した費用の全額が償還されると記載されています。

逆に言うと、市の基準額を超えて支払った分は自己負担になる可能性があります。市原市の案内にも「市が定める基準額を基礎として積算した額と、申請者が事業者に支払った額のいずれか安価な額を上限として償還します。このことから、撤去費用の全額を償還できない場合もあります」と明記されています。

対象になるのは「全壊」の家です

ここがいちばん誤解の多いところです。

環境省の「公費解体・撤去マニュアル(第7版・令和8年8月)」では、公費解体の対象は罹災証明書で「全壊」と判定された家屋が原則とされています。半壊まで対象が広がるのは、大量の災害廃棄物の発生が見込まれ、かつその災害が「特定非常災害」に指定された場合です。

令和8年8月千葉豪雨と令和8年台風第25号について、令和8年9月24日時点で特定非常災害に指定された旨の公表は確認できませんでした。実際に、千葉県内で受付が確認できた3市の制度はいずれも「全壊」限定になっています。

したがって、現時点では「半壊でも公費解体が使える」と考えないほうが安全です。ただし半壊の場合は、次の記事で説明する「住宅の応急修理」や被災者生活再建支援金など、別の制度が使えます。

「全壊」の判定はどう決まるのか

内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(令和8年6月版)では、被害の程度は住家の損害割合で区分されます。

区分 損害割合
全壊 50%以上
大規模半壊 40%以上50%未満
中規模半壊 30%以上40%未満
半壊 20%以上30%未満
準半壊 10%以上20%未満
準半壊に至らない(一部損壊) 10%未満

全壊の定義は「住家全部が倒壊、流失、埋没、焼失したもの、または住家の損壊が甚だしく、補修により元通りに再使用することが困難なもの」で、損害割合が50%以上に達した程度のものです。

そして重要なのは、この判定に納得できないときは再調査を依頼できることです。同指針には、外観だけを見る第1次調査に対して、被災者からの申請があった場合に室内に立ち入る第2次調査を実施すると定められています。第2次調査は自動では行われません。判定結果が実感と合わないと感じたら、申請してください。

詳しい手順は「罹災証明書の申請と、片付ける前に撮るべき写真」にまとめました。

千葉県内で受付が確認できた3市(令和8年9月24日時点)

各市の公式ページで確認できた内容です。この表は確認日時点のもので、期限は延長・変更されることがあります。申請前に必ず市の案内をご確認ください。

千葉市

制度名 被災家屋等の解体・撤去(公費解体/自費解体)
対象 り災証明書で「全壊」と判定された家屋等
受付期間 令和8年9月9日 ~ 令和8年12月28日
自費解体の償還 あり。受付開始前に自費で解体・撤去したものも対象
窓口 都市局建築部建築指導課(市役所本庁舎低層棟4階)/043-245-5835
注意点 一部のみの解体・撤去はできず、原則として建物全体が対象。家財等の搬出は制度の対象外

市原市

制度名 令和8年8月千葉豪雨により全壊した家屋に対する公費解体・撤去
対象 罹災証明書等で「全壊」の判定を受けた家屋(一部解体は対象外)
市による解体の申請期限 令和8年10月30日(金)午後4時まで
自費解体の償還 あり。事業者と契約を締結する前に資源循環推進課へ相談が必要
窓口 環境部 資源循環推進課(第2庁舎3階)/0436-23-9053

柏市

制度名 被災建物の解体・撤去/自費解体(解体費用の立て替えと払い戻し)
対象 罹災証明書等で「全壊」と判定された家屋
内容 所有者が費用を負担して業者と契約し解体・撤去を行った後、市が費用を支払う方式
窓口 廃棄物政策課/04-7167-1140
受付期間 公式ページでの明記を確認できませんでした。廃棄物政策課へご確認ください

このほかの市町村については、令和8年9月24日時点で公式ページに解体制度の案内を確認できませんでした。ただしこれは「制度がない」という意味ではありません。千葉市が8月13日の豪雨に対して9月9日に受付を開始したように、受付開始は災害から数週間後になることが普通です。全壊の判定を受けた方は、まずお住まいの市町村の環境部門または建築部門にお問い合わせください。

契約する前に市へ相談してください(いちばん大事な話)

自費解体の費用償還で最も多いつまずきが、「市に相談する前に契約して壊してしまった」というケースです。

環境省の手引きでも、契約締結前に複数の見積書や写真、建物配置図を用意して市町村へ相談することが標準の手順として示されています。市原市の案内は、自費解体の申請方法の1番目に「事業者と契約を締結する前に、資源循環推進課に相談してください」と明記しています。

なぜ先に相談が必要なのか。理由は3つあります。

  1. 償還の上限額(市の基準額)を先に知れる。これを知らずに契約すると、差額を自己負担することになります。
  2. 必要な写真を撮り逃さない。解体前・施工前・施工中・施工後の写真が必要です。壊し終わってから「撮っていなかった」は取り返せません。
  3. 業者の要件を満たしているか確認できる。次に説明します。

業者選びで絶対に外せない2つの条件

1. 建設業許可または解体工事業登録があること

環境省の手引きでは、建設業許可または解体工事業登録を受けた業者を選定することが求められており、これに反すると償還が承認されない要因になります。無登録の業者に頼むと、工事そのものが法令違反であるだけでなく、費用も戻ってきません。

2. マニフェスト(産業廃棄物管理票)を出せること

自費解体の償還申請には、マニフェストの写しが必須です。千葉市・市原市いずれの案内にも必要書類として明記されています。マニフェストは廃棄物を適正に処理したことを証明する伝票で、これがないと運搬費・処分費が償還の対象になりません。

逆に言えば、「マニフェストを出せますか」と聞くだけで、業者の適格性はかなり判別できます。言葉に詰まる、あるいは「うちは出さない」と答える業者には頼まないでください。

災害に便乗した業者にご注意ください

市原市も公式サイトで「災害に便乗した悪質商法にご注意ください」と注意を呼びかけています。被災直後に突然訪ねてきて「今すぐ契約すれば安くします」「保険で全部おりますよ」と契約を急がせる業者には、その場で判断しないでください。公費解体も費用償還も、急いで契約しないほうが有利になる制度です。一度電話を切って、市の担当課に確認する時間をとってください。

必要書類(自費解体の費用償還の場合)

千葉市・市原市の案内と環境省の標準様式集で共通して求められているものです。

  • 償還申請書
  • 本人確認書類の写し(運転免許証、個人番号カードなど)
  • 建物配置図
  • 状況写真(解体前・施工前・施工中・施工後)
  • 見積書および契約書の写し
  • 領収書など費用を支払ったことを証する書類の写し
  • マニフェストの写し

罹災証明書や登記事項証明書といった行政が持っている情報は、市町村側で確認できるため添付不要とされています。

所有者が複数いる場合・相続が終わっていない場合

実務でいちばん時間がかかるのがここです。

環境省のマニュアルでは、相続などにより建物が複数人で共有されている場合、共有者全員の同意が必要とされています。市原市も「申請者を除く共有者全員分」の同意書を求めています。書面を郵送でやりとりすると1か月程度かかる想定が示されているため、早めに動き始めてください。

相続人が決まっていない場合には宣誓書という方式が用意されています(市原市は「自費解体・撤去に要する費用の償還に係る宣誓書」を掲載)。令和6年能登半島地震では全体の約5%程度でこの方式が活用されたとマニュアルに記載されています。「相続が済んでいないから無理だ」と諦めないでください。

また、抵当権などが設定されている建物では権利者の承諾書が必要です。未登記家屋については、固定資産税の納税義務者から同意を得るよう示されています。

どこまでが対象で、どこからが自己負担か

環境省の質疑応答集と家屋解体マニュアルで確認できた範囲です。

対象物 扱い
倉庫・車庫など 主建物と一体的に解体する場合は対象になる
壊れて処分せざるを得ない家財・家電 災害廃棄物とみなし、家屋の解体と併せて撤去する場合は補助対象。貴重品は事前に持ち出す必要がある
ブロック塀・擁壁 原則対象外。倒壊のおそれがある場合や工事の支障になる場合は対象となり得る
工事に支障のない庭木・庭石 基本的に対象外
修理費・部分解体・清掃や復旧の費用・整地費用 対象外

自動車や被災車両、門・フェンス・カーポートの個別の扱いについては、今回参照した環境省の資料で明確な記載を確認できませんでした。該当する場合は市の担当課にご確認ください。

お金が戻ってくるまでの期間

環境省の手引きには、自費解体の償還までおおむね2か月程度と記載されています。解体費用は一度立て替える必要があるということです。

資金の余裕がない場合は、立て替えが不要な「市による解体・撤去」を選ぶほうが負担は軽くなります。ただし市が業者を手配する順番待ちになるため、着工までに時間がかかります。どちらを選ぶかは、急ぎ度と資金状況で決めてください。

解体したあとの固定資産税に、一つ落とし穴があります

これは災害に限らない話ですが、知らないと驚くところなので書いておきます。

固定資産税はその年の1月1日(賦課期日)の状況で課税されます。千葉市のFAQにも「たとえ、年の途中で家屋を取り壊しても、今年度分の税は納めていただくことになります」と明記されています。家屋分の課税がなくなるのは翌年度からです。

さらに注意が必要なのは、家がなくなることで土地の税額が上がる場合があることです。住宅が建っている土地に適用される特例が外れるためで、千葉市もこの点に言及しています。

ただし災害の場合は、市税の減免という別の制度があります。千葉市は今回の豪雨について、被害の程度に応じた固定資産税・都市計画税の減免を案内しています。詳しくは「被災した家の解体とお金」にまとめました。更地にしたあとの税金の一般的な話は「更地にすると固定資産税は上がる|増えた分を減免してくれる自治体一覧」をご覧ください。

まとめ:順番を間違えないことがすべてです

  1. 片付ける前に写真を撮る。スマホで、建物の全体と被害箇所、浸水の高さがわかるように。
  2. 罹災証明書を申請する。判定に納得できなければ第2次調査を申請できます。
  3. 「全壊」と判定されたら、解体業者と契約する前に市の担当課へ相談する。
  4. 業者は「建設業許可または解体工事業登録があるか」「マニフェストを出せるか」で選ぶ。
  5. 見積書・契約書・領収書・写真・マニフェストを必ず保管する。

被災した直後は、判断することが多すぎて当然しんどいです。ただ、この5つの順番だけ押さえておけば、あとから「あれをやっておけばよかった」となる場面はかなり減ります。

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このページの出典

  • 環境省「公費解体・撤去マニュアル(第7版)」令和8年8月
  • 環境省「自費解体・撤去の手引き(第2版)」令和8年7月、および別冊・質疑応答集、標準様式集
  • 環境省「災害等廃棄物処理事業費補助金交付要綱」「災害関係業務事務処理マニュアル」
  • 内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」令和8年6月版
  • 気象庁「令和8年8月13日からの千葉県の豪雨の名称について」令和8年8月14日
  • 千葉県 第8回災害対策本部会議資料(令和8年9月3日)、令和8年台風第25号に係る災害救助法の適用について
  • 千葉市「令和8年8月千葉豪雨 被災家屋等の解体・撤去」
  • 市原市「令和8年8月千葉豪雨により全壊した家屋に対する公費解体・撤去を実施」
  • 柏市「令和8年8月千葉豪雨 被災された方に向けた支援情報まとめ」

最終確認日:令和8年9月24日。制度の内容・期限・窓口は変更されることがあります。申請前に必ず各市町村の公式案内をご確認ください。このページは制度の全体像を整理したもので、個別の可否を判断するものではありません。

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